沖縄の伝統的な漁法の一つ、電灯潜り漁。文字通り電灯を用いて、夜間に寝ている魚を漁獲する漁法です。電灯潜り漁は、魚の行動学を利用した効率的な漁法であり、船釣りや網漁よりも環境への負担が比較的少ないとされています。その電灯潜り漁に取り組む、ONE SHOT Miyakojimaの高田和大(たかたかずひろ)さん。電灯潜り漁は太陽が沈んで、暗闇が海を包む20時ごろから始まります。海の状況を見ながら、時には漁師同士で情報交換をしながら今日の漁場を選びます。海へはビーチから入っていくスタイルの高田さん。陸側の街灯や立標を目印に位置情報を把握しながら沖合に向かって泳ぎます。電灯潜り漁では、水中銃を扱う技術も重要ですが、魚の根(家)をどれだけ多く知っているかが大きな鍵となります。ある根で魚を獲っても、その根が魚にとって寝心地の良い家であれば、また別の魚が戻ってくるためです。他の漁師が知らなかったり、あまり行かないような根を発見し、データ蓄積しておくことも漁師としてかかせない仕事の一つです。持続可能で環境に優しく、消費者にも美味しい、電灯潜り漁高田さんは、料理人やお客様が求める魚を出来る限り獲ってくるよう努力しています。「必要な魚を、必要な量だけ」、そのことが持続可能な漁業にもつながると語ります。また産卵前の稚魚は狙わず、「良個体」を狙うのもそのような理由があります。魚を見つけたら水中銃を使い、「命をいただくなら苦しまずに」という信念からキルショット「脳天一撃」を狙います。死んだことにも気付かない即死状態にすることで、魚にストレスを与えず、その旨味を最大限に引き出すことができるのです。工夫が光る、新鮮な魚を保つアイディア一回の漁は4時間から6時間に及びます。その間、仕留めた魚の鮮度を保つために様々な工夫を凝らしています。海外のレジャーグッズからヒントを得て、海中でも魚の鮮度を保つことができるように専用の容器を海外から輸入したそう。容器はもともと保冷力が強く、入れておいた氷が溶けづらいため、魚の品質を落とすことなく市場に届けることができます。また、漁から上がるとすぐにハラワタや血合いなどの処理を行い、すぐに配送の準備を高田さん自ら行っています。このようにして獲った魚は、早ければ翌日の朝には飲食店に届きます。海からテーブルへ、届けたい魚の魅力とストーリー現在、高田さんの魚は宮古島だけでなく、全国各地の一流飲食店にも届けられ、その高品質が高く評価されています。鮮度や味だけでなく、一匹一匹の魚の魅力やストーリーを伝えたい高田さんの想いが多くのシェフや料理人から信頼を得て、多くの食通たちに感動をお届けしています。さらに、時折、自身が獲った魚と共に、お店のカウンターに立ってお客様に直接魚の魅力を伝える食のイベントも開催しているそうです。魚の生態や漁法の背景、鮮度の秘密などを語ることで、食事の体験が一層豊かになります。このような活動を通じて、高田さんは魚の美味しさだけでなく、漁業の持続可能性や環境保護の重要性についても啓蒙しています。魚を一匹一匹大切に扱う漁師としての経験を絵でも表現漁師として活躍する傍ら、絵師としてもその才能を発揮している高田さん。絵を描き始めたのは、コロナ禍で時間ができたことがきっかけでした。昔から好きだった絵に再び取り組むことを決意し、「せっかく描くなら漁師にしか描けない絵を」と、漁師としての視点を活かした作品作りに励んでいます。高田さんは「漁師だからこそ、誰よりも魚を触っている。その肌ざわりや形、色合いを漁師のフィルターを通して描き上げることは、僕にしかできない絵」と語ります。魚の繊細な質感や美しい色彩を見事に表現したポストカードやステッカーは島のお土産屋さんでも目にすることができます。一期一会の思いを込めて、ONE SHOT Miyakojimaの挑戦「ONE SHOT Miyakojima」の由来は、「一期一会」という意味を込めているそうです。高田さんは、一回一回の勝負で向き合って、獲らせてもらったお魚一匹一匹に心から感謝し、大切に扱うことを自分との約束事としています。大漁が正義とされた時代から、資源管理の時代へと変わりつつある現代において、私たちは海への負荷を最小限にすることで、孫の代まで美味しい魚を残したい――、獲れたお魚の数や量で勝負するのではなく、これからお魚一匹の価値を最大限に高めることにこれからも取り組んでいくと話す高田さんの目は、未来を見据えて輝いています。サントリーニ ホテル&ヴィラズ 宮古島ならびに、The Olivea でも、サステナブルツーリズムを推進する中で、高田さんをはじめとする生産者の皆さまと食事やそこに息づく物語を通じて、これからも地域の持続可能な発展に寄与して参りたいです。